無敵に挑む馬鹿オヤジの無謀な復讐劇『96時間 リベンジ』

前作『96時間』は一本筋が通りすぎていて、もはや単純が極まり切ったアクション映画の傑作だった。攫われた娘を助け出す。リミットは96時間。ただそれだけ。この筋を面白くするためだけに、物語、設定、キャラクターのすべてが動員されるという贅沢な逸品だ。その続篇ということで、当然、ハードルは高い。が、期待は裏切られなかった。さすがに、超えた、とまではいえない。残念ながら。前作の完成度は、ほとんど奇跡的だったといってもいい。それにあの娘狂いの父親の無敵ぶりをぼくたちはすでに知ってしまった。この差は大きい。セガール級の無双キャラにハラハラドキドキはない。が、そこは大暴走への期待で補える。

同タイトルの続篇だ、今度はどんな96時間を用意してくるんだろう…おお、舞台はイスタンブールか、む、リベンジってあれか、前作で無双オヤジが殺した馬鹿の父親が復讐にやってくる話なんだ、へー、我が子を愛するオヤジ同士の対決ってわけね、うちの息子がよその娘攫いまくってたとかそんなの関係ないんだぜ!愛する息子を殺されたからにはノールールで復讐しちゃうからな…ってこいつも相当だなー、無敵のブライアンとどっこいどっこいの親バカだわーなどと思っているうちにあれよあれよと時間が過ぎていく。あれ、96時間は?…うん、関係ないね。前作で邦題つけたやつなんとかしろよ。まあ、面白かったから許すけどさ。

今作のハイライトはなんといっても暴走オヤジの血を引く娘の活躍だろう。あのちょっとお馬鹿だけど気は優しい愛すべきドジっ子のキムが、泣きながら手足をバタバタ振り回していじめっ子に立ち向かっていったら学校中の窓ガラスを割っちゃった、てへぺろ、みたいな大立ち回りを演じるのである。イスタンブールの街中で。これはダメだわー、ないわー、ってゲラゲラ笑いながら見られる傑作シーンが山ほどある。手榴弾とかカーチェイスとかね、ブライアンの鬼畜っぷりが存分に発揮されてて実に楽しい。キムが運転免許にチャレンジ中って話の枕がこんなところで効いてくるなんて悪ノリがすぎやしませんかね、いいぞもっとやれ。

で、話は後半戦の元嫁救出劇に突入。実は、ここからの展開については少し残念だな、というのが正直な感想だったりする。とにかく、前半の親娘暴走劇が素晴らしすぎた。些かのトーンダウンはやむを得ない。コンパクトでリアルな格闘シーンなど見所もある。まあ、及第点はつけていい。ただ、ラスボスがいなかった。陰惨な復讐劇を誓う敵方のオヤジが誤算だった。序盤は存分に魅せてくれた。そのコッテリ脂のノった悪役ぶりはクライマックスの盛り上がりを期待させるに十分だった。が、意外にも大事なところで息切れしてしまう。もし、ここでもうひと盛り上がりあったなら、奇跡の前作超えだって夢じゃなかった。実に惜しい。

とまあ、残念なところもあるにはある。前作の話をなかったことにしまくる傍若無人な脚本もツッコミどころは満載だ。え?ブライアンの元嫁ったらいきなり金持ちの再婚相手と仲違いしちゃってるわけ?つか、脳天気娘のキムって確か歌手志望で、前作じゃ超大物シンガーと知り合って専属トレーナーとかマネージャーとか紹介されてたよね?ひと言も触れないとかナニソレ?それでいいの?…いいんです!既定路線の甘すぎるホームドラマ要素もことこの映画についていえば不思議と許せちゃう。もうね、そんな細かいことはどうでいい、そう思わせるに十分な娯楽作品に仕上がっている。結論。アクション好きなら観て損なし。

映画『96時間 リベンジ』公式サイト


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