紀里谷和明監督“CASSHERN”

紀里谷和明監督“CASSHERN”また“CASSHERN”を観てしまった。これで都合3度目になる。

監督は紀里谷和明。この人、宇多田ヒカルの旦那ということで随分と損をしているように思う。なんだか、山口百恵と結婚した三浦友和みたいだ。嫁の七光りなんて必要ないだけの力量を十分に示しながら、ろくに吟味もせず判断をくだす消費者に不当な評価を受けてしまう。

ネット上にばらまかれている批評…というか感想の中に必ず見られる「長いPVを見ているよう」だとか「PV監督の自己満足」といった意見は全く聞くに値しない。ちゃんとこの映画を観てなおPVに見えたというなら、その人の目はきっとぽっかり空いた節穴だ。

この映画、どこをとっても本当によくできている。

CGをふんだんに使いながらあえて写実を目指さず、絵画的リアルを追求するような独特の映像美。映画、舞台、アニメでこれまで試みられてきた表現を大胆に導入した演出。含みを持たせながらも結末にしっかり責任を持ちメッセージを明確にした脚本。ちりばめられた伏線をことごとく回収していく無駄のない展開。
新造人間誕生から新造人間による国家建設宣言にいたるまでのシークエンスなど、物語的にも感情的にも出色のできだと思う。

ことSFという分野の邦画でここまで完成度の高い作品はまさに空前だ。

確かに編集がストーリーの理解に対してあまり親切じゃないところはある。台詞も文語調な上に情報量が抑えられている所為で、話の全体像が見え難いということもあるだろう。けれども、適当に流さずちゃんと見て理解できないほど難解ではないし、この程度のややこしさは軽くエンターテイメントの範疇だと思う。

そして忘れてはいけないのが俳優陣だ。これがまたかなりいい。麻生久美子は芯の強い可憐さを余すところなく体現しているし、大滝秀治や寺尾聰といったベテラン勢はこの映画に必要な重厚さをしっかり提供している。

中でも唐沢寿明のキャラ立ちは絶品だ。殆ど生身の人間とは思えない。

これだけゴチャゴチャと書いておきながらこんなことを言うのもおかしいけれど、未見の方は是非不要な先入観にとらわれず素直な気持ちで観て欲しい。だいたい他人の感想なんてあてにはならない。

DVDを買って正解だった。

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